オタクだった頃の生活って、もう頭のどこか遠くに行っちゃってる。
昔は、オタクになる前の自分なんてまるで思い出せなかったのに、今じゃ逆にオタクだった時のことが夢みたいに感じる。
あの灼熱の夏フェスでタクちゃんの登場をただただ待ち続けてた自分とか、5時間立ちっぱなしで手に入れたタクちゃんの生写真とか。
朝から夜まで働いて、そのまま夜行バスに飛び乗ってライブに向かってたあの日々たち。
全部、現実から逃げるための手段。
止まったら負け、冷静になったら終わり。超特急どころか暴走列車みたいに突っ走ってたんだけど、気づいたら「え、行き先どこだったっけ?」って感じ。
結局はわたし、タクちゃんになりたかった。
自分にはないものを全部持ってるタクちゃんは、
もう憧れってレベルを超えて、「こうなりたい」っていうわたしの理想そのものだった。
タクちゃんを好きで追いかけてたんじゃなくて、実は自分の欠けてる部分を埋めるために、タクちゃんを必死に見つめてたんだよね。
でも、冷静に考えたら、それってただの自分のコンプレックスをアイドルで埋めようとしてただけじゃん?
あの時は気づかなくて、「タクちゃん命!」とか思ってたけど、今思えば「いや、ただの現実逃避だったじゃん?」って笑っちゃう。
あの頃の暴走列車みたいなスピード感は幻で、今じゃそのレールも消えかけてる。
だけど、タクちゃんになりたかったあの必死な自分、あれだけはどっかでまだ残ってるんだろうな。